前回のコラムでは、「本を読む前に、どういうことをすべきか」についてお話しました。頭のなかに「知識や情報を受け入れる準備」をしておけば、本の内容を理解しやすくなるからです。では、簡単に復習しておきますね。
情報の理解力を高める準備は、「2つ」ありました。
1つ目は、「プリペードマインド」、読書の目的(なんのために本を読むのか)を明らかにしたり、「この本を読むと、どのような知識が得られるのか」をイメージします。
2つ目は、「プライミング」、キーワードを探すように、「1ページあたり2秒~5秒くらいのスピード」でパラパラ読みをして、全体の雰囲気や流れをつかんでおきます。
スキミング・リーディングの「5つのステップ」
準備の仕方が分かったら、具体的に本を読んでいきます。
「速習法」には、「3つの読み方」がありますが、今回は概要を把握する(全体を広く浅く理解する)ときの読み方=「スキミング・リーディング」を覚えましょう。
この読み方は、「知っている知識がほとんどない分野」の勉強に役立つ読み方です。スキムとは、「すくい取る」という意味です。
認知心理学では、「情報を階層ごとにまとめ、構造的に覚える」と理解しやすいといわれています。
そこで「速習法」では、
「本のタイトル」→「章タイトル」→「大見出し」→「小見出し」
の関連性や意味に気を付けながら、1冊の内容を「階層ごと」に理解していきます。
◆ステップ1 【目次を読む】
目次は、「本の内容を階層ごとにまとめたもの」ですから、目次を読むだけで、「この本には、どのような内容が書いているか」を大まかに(階層ごとに)把握できます。
ただし目次を読むときは、(1)第1章のタイトル、(2)大見出し、(3)小見出しのように頭から順番に読んではいけません。それでは階層ごとに読んだことにはならないからです。
目次は「章タイトルをすべて読み、次に大見出しをすべて読み、最後に小見出しをすべて読む」ようにします。(第1章の章タイトル→第2章の章タイトル→第3章の章タイトル→第1章の大見出し→第2章の大見出し……)
◆ステップ2 【プリペアードマインドをセットする】
「何のためにこの本を読むのか」
「この本を読むと、どのような知識が得られるか」
「どのような報酬(メリット)が得られるか」
を考えて、目的意識を高めましょう。
◆ステップ3 【プライミングをかける】
パラパラ読みをして、「この本の、このあたりが必要かもしれない」ということを、なんとなくつかんでおきます。
決めておいたキーワードを探す感じで読むと、プライミング記憶を刺激しやすいと思います。
目に留まった重要箇所だけを読めばいい
◆ステップ4 【スキミングする】
目次を読んだり、パラパラ読みをした結果、
「なんとなく、このあたりが重要かもしれない」
「このあたりを読めば、本を読む目的が達成できるかもしれない」
ということが分かってきたら、「目に留まった重要箇所」だけを読んできます。
目に留まらなかった場所は、読まなくても構いません。
「本は、最初から最後まですべて読まなければいけない」と思っている人が多いのですが、目に留まったところ、必要だと思ったところだけを読めばいい。どうしても読み残しが気になるなら、最後に通読(トレーシング・リーディグ 第5回目で紹介)をすればいいでしょう。
スキミングするときのコツは、
「小見出しがつけられた理由を考えながら読む」ことです。
プリペアードマインドとプライミングによって、「このページに大切なことが書かれてありそうだ」と目星をつけたら、そのページ内の小見出しを見て(そのページに小見出しがなければ、その近くの小見出しを見て)、
「なぜ、この小見出しがついているのか」
「この小見出し以降の文章には、どのような内容が書かれてあるのか」
を考えながら読み進めると、理解を深めることができます。
◆ステップ5 【ノートに要点をまとめる】
重点箇所を読み終えたら、要点をノートに書き出しておきましょう。これは、読むよりも書くほうが記憶に残りやすいからです。
同じ分野の本を「最低4冊」読む
概要把握するときは、1冊だけではなく、「複数の本」でスキミング・リーディングをしたほうがいいと思います。
1冊の本では、ひとりの著者の意見しか得ることができません。知識の幅を広げるためには、その分野の本を「最低4冊」は読んでください。
1冊目は、知識がないため速く読むことはできませんが、2冊目、3冊目と読み進めていくうちに「前の本にも同じようなことが書いてあったから、ここは読み飛ばしても大丈夫だろう」と気付けるようになり、読むスピードがどんどん速くなるはずです。
そして、概要を把握したら、次は、より深く情報を掘り下げていきましょう。
次回は、詳細把握に適した読み方=「ターゲット・リーディング」について説明します。
(写真撮影:加藤康)